Space As-Libのシステム開発
お知らせ
2022年8月5日付けのプレスリリースです。
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概要
- 打ち上げ日:2022年2月20日
- 打ち上げ機:NG-17/Cygnus
- ミッション:全固体リチウムイオン電池の宇宙実証
- 開発箇所:電気設計、熱設計、構造設計を含むシステム開発
開発内容
日立造船とJAXAが開発した全固体リチウムイオン電池を、宇宙で動作実証するための実験装置を開発しました。実験装置の名称は、全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space As-Lib)で、ISSの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置されたi-SEEP/SPySE上に搭載されます。
弊社では、Space As-Libのシステム開発を担当しました。Space As-Libのサイズは、だいたい3U CubeSatと同じサイズです。開発箇所は、大きく分けると下記の5つになります。
1)全固体リチウムイオン電池のパッケージ化
単セルの全固体リチウムイオン電池複数個を並列接続し、打ち上げの振動や衝撃に耐えられるようにしっかりと筐体に格納し、固定しました。また、様々な条件で充放電試験が実施できるように、温度制御用のヒータと温度センサの取り付けを行いました。
2)充放電回路およびカメラ制御回路の開発
全固体リチウムイオン電池を充放電するための回路を開発しました。全固体リチウムイオン電池の実証は、人の滞在する宇宙ステーションで行われます。そのため、異常が生じた場合には安全にシャットダウンするように、いくつもの保護回路が搭載されています。また、全固体リチウムイオン電池を用いて、アプリケーションの動作実証を行うために、RICOH社のTHETAカメラを取り付けて、その制御回路を開発しました。弊社では、SOLISSでもTHETAカメラの制御回路を開発した実績があり、その知見を活かすことができました。
3)熱設計・熱解析
目まぐるしく温度の変化する宇宙で、安定した温度環境で実験ができるように熱設計・熱解析が行われています。表面を覆っている白い布のようなものがMLIで、宇宙空間と断熱を行うために取り付けられています。
4)構造設計・解析
決められたサイズ・質量の中で、十分な強度を持ち、必要な装置をすべて搭載できるように、筐体の設計を行いました。THETAカメラの筐体は、SOLISSの開発実績を可能な限り流用しています。
5)ソフトウェア開発
Space As-Libの制御は、地上から送られてくるコマンドにより行われます。コマンドを適切に処理しバッテリの充放電・カメラの制御を行い、また、電池やカメラの状態を周期的に地上へと送信するソフトウェアの開発を行いました。
Space As-Libは、プレスリリースにありますように、世界で初めて軌道上での全固体リチウムイオン電池の充放電を実現することができました。また、全固体リチウムイオン電池により駆動したTHETAカメラを用いて、迫力あるISSの画像を取得することもできました。今回の宇宙実証を機に、全固体リチウムイオン電池が多くの宇宙機で使用されることを願っています。